インタビュー・対談

Interviews / Dialogues

特別対談 vol.1
官と民が化学反応できるエリアは無限、
まさに宝の山のようなもの

大阪府四條畷市長東 修平
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鷲見英利
官民連携事業研究所 代表取締役

写真左:東市長、右:鷲見代表
収録・撮影:2022年6月9日

四條畷市長
東 修平あずま しゅうへい

昭和63年10月3日 大阪府四條畷市生まれ
大阪府立四條畷高校卒業、京都大学工学部物理工学科、同大学大学院工学研究科修士課程修了
2014年外務省に入省、環太平洋経済連携協定(TPP)をはじめ、貿易協定の交渉に関する業務に従事したのち、野村総合研究所インドにて、自動車業界のグローバル事業戦略・経営戦略の策定を支援
2017年1月15日に行われた四條畷市長選挙に初当選
全国で最年少の現役市長(初当選時)となる
2020年12月に再選し、現在2期目

プロローグ

官民連携事業研究所が全国で進める「官民連携」はなにをめざしているのか。

就任当時、国内最年少市長として知られ、これまでも様々な先進的な取り組みを積極的に行ってこられた大阪府四條畷市の東市長に鷲見がこれからの行政と企業の関わり方、そしてその可能性と未来について、ざっくばらんにお話しを伺いました。

東市長が考える、未来に向けた行政のありかた、そして官民連携の目指すべきゴールとは、どのようなものなのでしょうか。

官と民は分かれた存在ではなく、
ひとつになっていくもの

鷲見:まず市長にお伺いしたいのですが、市長は「官民連携」のイメージをどのようにお持ちでしょうか。

東:今でこそ官民連携という言葉が浸透してきていますが、当初は人によってその捉え方が違ったと思うんです。
単なる行政側から民間企業に発注しただけみたいなものが「官民連携」と呼ばれていることもありました。
でも、本当の「官民連携」は、1と1が出会って3や4になる事業を意味すると思います。

鷲見:確かに「官民連携」は、今いろんなところで大変活用されてきていますよね。世の中には、本当にこれ「官民連携」?っていうものもあったりしますし。

東:おっしゃる通り5年ぐらい前だと、まだ「官民連携」の事例が世の中にあまりなかったので、一歩目を踏み出すこと自体に価値があったんですが、今ではすでに多くの自治体がやっていますので、もはや実施するだけでは先進性がありません。
今後、重要になってくるのは、官と民が分かれた存在ではなく一体となって、強みや弱みを伸ばし合ったり補ったりすること。そうしたことが普通に起こり得る状態になっていくことと思います。
その結果、住民福祉の向上に繋がっていくというのが理想です。
「官」だけで住民を幸せにするわけではなく、「官」でも「民」でも住民を幸せにしていくという価値観が広まっていくのが、次のステージなんだろうと思います。

鷲見:行政だから社会課題に関する事業をやっていいとか、民間会社はしてはいけないとか、日本人はつい囲いをつくってしまいがちですよね。
実際にそう思ってる人が非常に多いじゃないですか。
わたしはそれは違うと思っていて、例えば民間会社だけで政策に近いことを立案し、責任をもってやってくれたら、それに越したことないですよね。
行政もそれを活かし発展させることのできるプロジェクトを作ることができる。
わたしは理想だと思うんですが、実は日本ってなぜか自治体と一緒に取り組みをするイコール行政ビジネスを狙いすぎる人が多すぎるイメージがありますよね。

例えば行政との関係をつくるのが得意だとか、つまり行政に慣れているイコール入札やプローザルが強い人たちがいるんですが、われわれは少し違うと思っていて、いろんな企業に B to C で社会課題解決ができる商品をどれだけ作ってもらえるかというのがとても大切だと考えています。
今は社会課題の解決が重要になっています。社会に対して良い効果を示せる商品をつくりたい各企業たちと、行政における社会課題解決をしようという環境がマッチングしなくてはならないと思っています。そういう意味でも、実証実験は企業に気づきを持ってもらえる良いチャンスだと思うんです。

東:今おっしゃったように、例えば民間企業は政策をする主体ではなく、あくまで行政が主体という考え方は、実は西洋的発想ですね。
少し小難しい話になってしまいますが、主客の分離やデカルトの要素還元主義のようなもので、自分という「主体」以外を「客体」とみなしたり、物事を部分でとらえたりする考えは、西洋の考え方です。

これは明治以降の西洋化が進む際に日本に取り入れられてきた考えで、今の日本人は大体がそういう考え方をしますが、本来の日本人は、主客を分けずに全体で物事をとらえるという、東洋思想の考え方をもつはずなんですよ。
我々はDNA的にはそういう考え方を持っていて、例えば主客を分けず、全体をとらえることが大切な官民一体は、本来は得意な発想法のはずです。

ただ、いろんな人が協力してやっていこうってところまではいいんですけど、残念ながら今いろんな行政のルールっていうのは、明治以降の西洋の思想に基づいてルール化されているものが多いので、東洋の思想で適用するときに、様々な壁があったりするんです。
実証実験までは行くけど、実装するときに難しくなる、というように。

なんでこんな話をしたかというと、そういう狭間の部分を乗り越えられないと、真の官民連携は難しいと感じているからです。
住民福祉向上を全体としてとらえて進めることで、新しい実証実験が実装される大きな流れになっていくんじゃないかと思っています。