インタビュー

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インタビュー vol.3
官民の垣根を超え、越境学習を全国へ
社会課題を学びの場に変える「GIFT」の
共同展開

株式会社ウィル・シード

株式会社ウィル・シード
中川孝晃 様、折原 優紀 様

人材開発・研修サービスを提供する株式会社ウィル・シード(以下「WiLLSeed」と表記)。同社が展開する「GIFT」は、企業のビジネスパーソンと自治体職員がチームを組み、地域の社会課題解決に取り組む越境型プログラムです。

2020年11月に官民連携事業研究所と同社が連携を開始してから、GIFTの参加企業・自治体はともに拡大。現在では累計15自治体、毎年約150名の参加者を集めるまでに成長しています。

今回は、GIFT立ち上げに携わった中川孝晃氏と、現在プログラムの企画を主に担当する折原優紀氏に、GIFTの成り立ちや官民連携事業研究所との協業によって得られた成果について聞きました。

「体験から学ぶ」を大切にする、WiLLSeedの原点

──まず、貴社が展開されている事業について教えてください

折原氏:人材開発や育成につながる研修サービスを主に企業向けに提供している会社です。社名の「WiLLSeed(意志の種)」が表すように、「自分で考え、自分らしく生きる意志」を育むことを大切にしています。

特徴的なのは、学校教育からスタートした会社だということです。創業者は少年時代を海外で過ごし、差別や貧困を目の当たりにしました。そうした社会課題をどう伝えていくか、という問題意識から、小中学生向けに「貿易ゲーム」を改良した「いきいきゲーム」を開発し、経済産業省と連携して、500校以上の小中学校、5万人以上の児童生徒に届けました。

子ども向けに行っていた研修でしたが、それを見た保護者の方から「これは企業の人材開発にも活かせるのでは」という声をいただきました。そのご縁をきっかけに企業の人材開発を行うようになり、現在はそちらがメイン事業となっています。

──民間企業と自治体が一緒に研修を行う「GIFT」はどのように生まれたのでしょうか

中川氏:震災から数年経ったタイミングで宮城県仙台市とのご縁が生まれたことがきっかけです。まだ震災の影響が色濃く残っているにも関わらず、関心が薄れていく、風化していくといったことに地域の方々がもどかしさを感じている時期でした。

行政だけでも企業だけでもNPOだけでも解決できない社会課題があるのだと知り、そこに貢献したいという思いを強くしたんです。同時に、実際に現場を見ることで「学べる、人が成長できる」という可能性も感じました。

折原氏:ちょうどその頃、ハーバードビジネススクールでも2008年のリーマンショックを受けて「ケーススタディだけでリーダーシップを学べるのか」という議論が白熱していました。実際に現地を見て、生の声を聞き、課題を探して解決策を考える──そういう実践的な学びが必要だと、ハーバードの学生が仙台に来てリーダーシップを学んでいたんです。
WiLLSeedもそれに触発された部分がありました。

 

官民連携事業研究所との出会いが「全国展開」に繋がる

──官民連携事業研究所との出会いについて教えてください

中川氏:当社の会長である長澤が鷲見代表と繋がりがあり、2020年に私も鷲見代表とお会いする機会がありました。

当時は東北で地域課題×人材開発のプログラムを展開していましたが、他の地域での展開にはまだ手が回っていない状況で。プログラムと呼べるほど体系化もされておらず、個別の企業ニーズに何とか応えている状況でした。

一方の官民連携事業研究所も研修事業に取り組まれていて、その中で自治体側も企業との繋がりを求めていたり、自治体職員の成長を促したいというニーズがあるものの、企業をどう巻き込むかという部分に課題を感じていらっしゃいました。

そこで「教育」という形で両社がコラボレーションすれば、良い入り口が作れるのではないかと。ランチを食べながら、そんな話をしたのが始まりです。

 

ノウハウから選定まで、自治体対応を一任

──どのような支援がありましたか?

中川氏:正式に業務提携を結んでからは、大きく2つの支援をいただきました。1つは、官民連携事業研究所が官民連携の研修事業でトライした際の知見やノウハウをシェアしていただいたこと。何ができそうか、どんな課題があるかといった内容です。

もう1つは、具体的な案件づくりです。企業に声をかけるには、まず「どこの自治体でやるか」を決めないといけないのですが、ちょうど当社の顧客企業から「こういう取り組みをやってみたい」というニーズが顕在化していたので、官民連携事業研究所に「どこの自治体とやれそうですか?」と相談しました。

はじめの自治体として、山梨県大月市を紹介していただきました。まだ参加企業が決まっていない段階でしたが、大月市には参加を快く承諾いただき、GIFTの前身プログラムが始まりました。これは官民連携事業研究所と大月市との協定や信頼関係があってこそだと思います。それを引っ提げて企業に営業・連携の相談をしていくという進め方でした。

──大月市が最初の自治体だったのですね

折原氏:はい。まずは2021年度に大月市と企業1社でトライアル的に実施しました。翌2022年度には大月市に加えて三重県伊賀市も参加し、ここで初めて異業種集合型、つまり複数企業から参加者を集める「GIFT」の形ができました。私もこの2022年の大月市からプロジェクトに参画しています。2023年度以降は、伊賀市、柏原市、諫早市など、全国の意欲ある自治体をご紹介いただいています。

──協業先の自治体選定はどうされているのですか?

中川氏:毎年、翌年度にどの地域でやるかを一緒に相談しています。こちらからは「首都圏から通いやすい」「こういう課題を抱えている自治体だとありがたい」といった要望を伝えます。官民連携事業研究所はそれを踏まえて、非常に協力的でニーズに合う自治体を紹介してくださいます。

特にありがたいのは、協力体制や柔軟性をもった自治体との連携が強いことです。私たちだけでは絶対にできない、信頼関係の構築をしていただいています。

──自治体向けの営業活動も基本的に官民連携事業研究所が?

中川氏:はい。対自治体のネットワークは基本的に官民連携事業研究所にお願いしています。一部、仙台など東北には弊社独自の繋がりがありますが、それ以外は全て官民連携事業研究所に調整いただいています。

聞けば、自治体からの引き合いは非常に多いそうです。ただ、私たちのキャパシティにも限界があるので、官民連携事業研究所に厳選・調整していただいている状況です。

 

数字だけではない、地域のためのプログラムへ

──官民連携事業研究所との協業による具体的な成果を教えてください

中川氏:まず、自治体数で言うと、累計15自治体と連携してきました。これは全て官民連携事業研究所にご紹介いただいた自治体です。

そして、GIFTの参加者数は、初年度の10名程度から順調に拡大し、現在は毎年150名を超えるまでになりました。企業側の営業は私たちがメインで行っていますが、「自治体と組んで、自治体職員も参加する」という特徴的なスタイルが、企業からも非常に評価されています。

──企業側の営業にもプラスの影響があったと

中川氏:そうですね。「自治体職員も一緒にチームを組む」という踏み込んだプログラムだという点が、信頼性や期待感を高めていると感じます。

実は、研修としては企業だけで完結させた方がシンプルで、運営も手間がかからない。でも、やはり自治体職員が入った方が地域の実情が知れて学びも深くなりますし、何より提案して終わりではなく、職員の方がその後も自治体内で次のアクションを起こしてくれることが重要だと考えています。間接的ではありますが、地域のために何かできることを考えた時、職員の方の人材育成にもなっているという実感があります。

折原氏:このスタイルが今のところ一番いいよね、というのは官民連携事業研究所とも話しています。

 

「やりきる」姿勢に感化されてきた

──官民連携事業研究所と組むと、どんなメリットがあると思いますか?

中川氏:「実行するまでやりきってくださる」ところだと思います。単に自治体を紹介するだけではなく、実行フェーズまで一緒に伴走してもらえる。そういう組み方ができるのが良さですね。

例えば、某自治体での初回実施の直前、プログラム内容を最終調整するタイミングで、自治体の意向と企業側の要望の間でデリケートな調整が必要になったことがありました。企画の最終段階でプログラムをどうするか迷っていたら、官民連携事業研究所の担当者から「今から話しますか?」とご連絡をいただいて。そこから3時間ほどかけて一緒にプログラムを練り直したんです。

最後まで踏ん張らなきゃいけないところで、一緒に腹を括ってくれる。そういう頼りがいがあるところに救われることは多いですね。

 

GIFTを起点に「自治体×企業」の可能性を探り続けたい

──今後、GIFTをどう展開していきたいですか?

折原氏:最近「越境学習」という言葉がよく使われていますが、この手段を使いながら人が成長していく機会をどんどん増やしていきたいです。官民連携事業研究所からも、「GIFTという形式だけでなく、いろんな形で教育という切り口で自治体と企業の連携ができるといいですね」という話をいただいています。

今は3〜4ヶ月かけたプロジェクト型ですが、短縮版をやってみるとか、企業と自治体職員だけでなく、地域の後継経営者や地元商工会を巻き込むとか。いろんなチャレンジができそうだという話はすでにしています。一緒に何かやってみましょうというスタンスでサポートいただけるので、挑戦もしやすいですね。

中川氏:さきほども触れましたが、研修は企業だけで開催したほうが効率的です。でも、効率や合理性だけを求めると本来の意味での地域貢献や社会課題の解決にはつながりません。参加者の心に火をつけ、地域の課題解決の当事者を増やすという意義を考えると、官民がともに頭を使い汗をかく今のスタイルが最適だと考えています。官民連携事業研究所は、こうしたスタイルを曲げずに支援してくださいます。今後も軸をぶらさずに、さらに活動を広げていけたらと考えています。


 

インタビュー Vol.1

官と民が化学反応できるエリアは無限、まさに宝の山のようなもの
大阪府四條畷市長 東 修平 × 鷲見英利